【インタビュー】「身体」の概念を覆す、新時代のスポーツHADO


「テクノスポーツで世界に夢と希望を与える」というビジョンを掲げARスポーツ事業を展開する株式会社meleap。同社が開発したリアルとバーチャルを組み合わせた新感覚スポーツ「HADO」は、ウェアラブルデバイスとARを活用し、人気漫画「ドラゴンボール」で登場する「かめはめ波」のような技を出してバトルを楽しむことができる。新時代におけるスポーツ市場の創造を目指すCEOの福田氏に、開発における想いや、経営とデザインについてのお話を伺った。




ARによって、「身体の拡張」を実現させる



- 貴社が開発された「HADO」について教えてください。


「HADO」はAR技術、モーション認識技術を使ったスポーツ競技です。僕たちは、このITと融合した新しいスポーツ競技のことを「テクノスポーツ」と呼んでいます。情報社会になり、そろそろ次世代の新しいスポーツが生まれてくるはずなのではないかと考えていました。これまでサッカーや野球のような「アナログスポーツ」があり、その後、工業社会においては「モータースポーツ」が生まれてきました。であれば、その次のステップとして「テクノスポーツ」があるのではないかと思いました。


- 「HADO」開発のきっかけは、人気漫画「ドラゴンボール」の必殺技であるかめはめ波への憧れだと拝見しました。


そうですね。確かに「かめはめ波を撃ちかったから」とよく話しているのですが、根源にあるのは「身体を拡張したい」という想いです。10代の頃から、もっと人間の身体には可能性があるんじゃないかと思っていて。かめはめ波を撃つとか、空を飛ぶとか、これまでの身体に対する概念を覆すような再発明をしたかったんです。その最初のステップとして、ARデバイスでかめはめ波を撃つことを考え、「HADO」開発をスタートしました。


- 「HADO」は身体拡張の最初のステップだったんですね。


はい。「身体の拡張」が目標なので、ARはあくまでそれを実現する一つの手段です。AR(Augmented Reality)の意味は「拡張現実」ですし、僕がやりたかった方向性にも合っていると感じています。視覚、触覚、聴覚など、身体の拡張の可能性を考える中で、ARには今までにない価値体験をつくるチャンスがあると思いました。


- なぜ、スポーツという形で実現されたのでしょうか?


「開発側が想像できない使い方を、ユーザーが見つけてくれる」ことに可能性を感じたからです。例えば、サッカーや野球も、開発した人が思いつかない技や戦略が生まれるじゃないですか。選手たちがやり込むほど熟練度が高くなり、その最先端の価値をつくり続けられるのがスポーツだと思うんです。それって、すごく面白いですよね。そういう理由から、人対人の対戦ものにしようと決めました。また、開発観点では、スポーツは継続的に行うものなので、終わりがあるRPGとは違って消費されないということもひとつの理由ではあります。

「HADO」は、自由に身体を動かしてプレーするという点でも、今までにない新しいスポーツ競技になり得ると思っています。広大なスポーツ史に新たなスポーツとして大きなインパクトをつくり出せればとても刺激的ですし、今後の拡がりを期待しています。




試行錯誤の先のイノベーション



- 「HADO」はどのようにして開発されたのでしょうか?


最初は、かめはめ波をどう撃つかを考えました。気功的な技って自分の身体だけを使って出しますよね。それを実現させるにあたって、ユーザーの頭と腕の位置のトラッキングが技術的な課題で、ユーザーが動き回る中でポジションをどう検出するかが難しく、最終的にどう落とし込めるかが悩みどころでした。


- 起業される前からアプリ開発の知識はあったんですか?


全くなかったですね。そもそも、開発経験がないメンバーで始めたので、アプリ開発ってどんなものかもわかっていなくて。技術を一から学びながら、プロトタイピングを繰り返す日々でした。本当に手探りで進めていったので大変だったんですが、スタートアップ業界の先輩方が社外アドバイザーとして話をしてくれる機会もあって、助けてもらった部分も大きいです。


- 技を実現する技術も難しいと思いますが、福田さんが思い描かれる「HADO」の世界観やイメージを社内で伝えることも難しそうです。どう共有されているんでしょうか?


会社では、どんな世界を創りたいかなど私が思っていることは意識して言語化するようにしています。「テクノスポーツで世界に夢と希望を与える」という会社のビジョンについても、常に言い続けています。そうすることで、どこに向かうのか、そのために何をすべきなのかをチームで考えられるようになります。また、プロダクトをつくる時も動画ありきです。大きな方向性として「何を大事にするか」や「どんな雰囲気になるか」を動画で判断することができるので。「HADO」を売り込む時も、この動画を使って「こんな世界をつくります」と伝えています。


- デザイン経営においても、アイデアの可視化はデザイナーの役割として重要視されていますが、貴社では福田さんがその役割も担っているのかもしれません。「経営にデザインを」という考えについてはどう思われますか?


経営者として、デザインにも精通していた方が良いとは思いますが、経営にデザインを取り入れることが良いかどうかは、よくわからないというのが正直な意見です。

僕自身も、大学時代は建築学科だったので、建物の中で人がどう行動するかといった建築デザインを学びましたし、大学院ではイノベーション教育プログラム「i.school」で、デザイン思考のプロセスなど勉強しました。なので、知識としてはありますが、実際デザイン思考で効果が発揮されるかはわからなくて使っていないんです。それよりも、試行錯誤を繰り返すうちに、イノベーションを起こすためには、「大量に情報をインプットして、大量に脳内シュミレーションして、ピンとくるものが正解だ」という自分なりの方法に辿り着いてしまいました。このプロセスが「デザイン経営」と関連するかはわかりませんが、「デザイン」の中に「イノベーション」が含まれるとは思っています。




世の中に1000年に一度のインパクトを与える会社に



- 貴社の今後の事業展開について教えてください。


練習会や大会などのイベントを加速させていきます。「HADO」はチーム競技なので、仲間とコミュニケーションをつくることに適しています。一緒に走り回って、汗をかいて、叫ぶといった、めちゃくちゃ体感度が高い体験を共有するので、ただオンラインゲームをするより密度の高い繋がりになると思うんですよ。

また、2018年から新しく観戦事業も始めています。店舗展開が進み、日常で「HADO」を楽しめる環境ができつつあるのでプロ化したいと思っていて。まずは、観戦することをとことん楽しめる番組を作って配信する。そして、視聴者を増やそうとしています。視聴者が増えれば、プレーヤーのファンが生まれ、プロが出てくる。その先にプロリーグの立ち上げを思い描いています。

新しい競技も今も模索中ですし、ユーザーが集うプラットフォームもつくろうとしています。ファンとプレーヤーやファン同士で繋がるような、今までのスポーツにないようなコミュニケーションツールにしたいですね。


- テクノスポーツのプラットフォーム、どんなものになるかワクワクしますね。では、この先どんな会社で在りたいと思われますか?


イノベーティブな会社にしたいです。革新し続ける組織っていうのは良いですよね。100年先を常に見据えていきたい。もっと言えば、1000年先を見据えていたいですが、それは現実的には難しいので研究開発という意味で100年先かな。でも、出したいインパクトは1000年に一度ですけどね。


- 今後の展開が楽しみです。最後に、福田さんの未来像について教えてください。


僕自身のやりたいことは、最初にお話した通り「身体の拡張」です。物理、生命を再定義することができたらと思っています。人間と魂の関係性とか、生物と非生物の関係性とか。例えばこの机が、自分自身であるとか。「生命」とは何かを再定義したい。そして、それをmeleapで実現できればと思います。


 ありがとうございました。





「身体の拡張」という目的において、「HADO」はまだ最初のステップだ。テクノロジーと身体が繋がっていく時代が来ると言われてはいるが、私たちの身体で何ができるようになるかはまだ想像できない。「理想を言えば、1000年先の未来を見据えたい」と話していた福田氏であれば、きっとそう遠くない未来に、新しい「身体」の概念をデザインしてくれるに違いない。


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