インテリア・DIY商品を販売する友安製作所(ともやすせいさくじょ)。2004年に立ち上げた自社ブランド「Colors」では、輸入壁紙・フロアタイル等の内装材の取り扱いや、自社オリジナルのインテリアアイテムの製造販売などを手掛ける。一方、2015年に始めたカフェ事業では、自社商品で作り上げた内装や、こだわりのメニューが写真映えするとInstagramでも話題に。代表の友安氏に、経営とデザインについてお話を伺った。
自分で作ることに価値がある
- はじめに、自社ブランド「Colors」が生まれた経緯を教えてください。
私は、高校・大学・大学院とアメリカで進学しまして、卒業後も向こうの商社に就職していました。1年ほどは商社で働いていたんですが、事業をしていた父親が一時的に体調を崩したことをもあり、25歳頃帰国したんです。そこで、父親の会社に入りたいと伝えたところ、「会社に入るのなら、半年以内に自分で自分の給料を稼げ」と厳命を受けました。
それで何をすべきかと迷っていた時、カーテンレールの資材の価格がものすごく高いことに気づきました。なぜなのかと聞いてみたところ「大手ブランドだから」と言われて。そこで、大手ブランドという理由で高いのであれば、自分一人でも安くて品質の良いものをブランディングすれば戦えるんじゃないかと思い、「Colors」という自社ブランドを立ち上げました。
- 大手ブランドと同じ品質で安くすることができるのでしょうか?
大学院時代、担当教授がよく「中間業者を徹底的に省くのが、今後10年のビジネスモデルだ」と言っていました。日本の会社は、いい意味でも、悪い意味でも、検査機関や監査機関が沢山あります。でも、直接海外のメーカーさんに交渉して仕入れることで、金額は3分の1くらいで同じような品質のものを提供できたんです。
- 中間業者を省いただけでそんなに価格が抑えられるんですね!
そうなんです。また、部屋を作る工程にも中間業者は存在します。壁紙・カーテン・床材などの内装商材は普通は業者さんが取り付けますが、これも省くことができると思いました。なので、弊社ではドライバーが1本あればお客さま自身で簡単に取り付けられる商品を販売しています。その他にも、少し取り付けが難しいものも動画でわかりやすく説明したり、壁紙にあらかじめ糊を付けて手間を省いたり、とちょっとした工夫をしています。「お客さま自身で取り付けができること」が自社ブランド「Colors」ブランドのひとつの価値なので、お客さまが内装商材を簡単に扱えるようにこだわって提供しています。
-「お客さま自身で取り付けができること」が価値とは、どういうことですか?
自分でモノを作る経験は、ライフスタイルを豊かにすると思うんです。私は「ライフスタイル=その人の今までの経験」だと考えていて。より豊かなライフスタイルを送るためには、自分自身で「経験」をつくっていく必要があると思います。
DIY商品は、お客さまの手間を強いることにはなるのですが、お客さま自身でモノを作り、お客さま自身の経験をつくることに繋がります。これは、弊社にとっても価値があることだと考えています。私たちは、内装を自分で作ることが当たり前になる文化をつくりたい。なので、売上には繋がらないんですが、その文化を根付かせるための普及活動、ファンづくり、ワークショップ、動画での啓蒙なども、力を入れてやっています。
独自の経済圏を創る、事業への仕掛け
- 続いて、会社の経営についてお伺いしたいのですが、友安さんは組織づくりについて何か意識されていることはありますか?
社内報に関してはかなり昔からやっていますね。理由としては、お客さまに「弊社に興味を持ってください」と言う前に、まず自社のスタッフに会社への興味を持って欲しかったからです。売上や取り組みも掲載していますが、スタッフの雑談なども載せています(笑)。
- 面白いですね。他にもそういったユニークな取り組みはあるのでしょうか?
スタッフのモチベーションを高めるために「友安アワード」というものを半期毎に開催しています。普通は代表である私がボーナスや給料を決めますが、友安アワードではスタッフみんなで決めることができます。まず、みんなが閲覧できるオンライン上で各自半年ごとの目標を登録し、その後も進捗率を定期的に入力します。そして、半年に一度「頑張っていた」と思う人に投票する。一番票数の多かった人に、私のポケットマネーから20万を渡しています。スタッフからすると、常に見られているという緊張感もあれば、みんなに頑張りを認められたと感じることもできる。ただのボーナスを貰うより、生きたお金というか、すごく嬉しいらしいです。
- 組織の団結力も生まれそうです。今後、この組織をどのようにしていきたいと考えていますか?
社員と一緒に「友安らしさ」を育んでいきたいです。会社というのは、家族のようなものだと思っています。社員の育て方もですが、実力のある人を外から採用するよりも、将来活躍する可能性がある人を大切にしたいと考えていて。例えば、アルバイトの時から友安のことを好きになり働いてくれているような人とか。「友安らしさ」は、いきなり外から来た人ではつくれないと思うので、時間をかけて思いを共有し、会社を育んでいきたいです。
「未来の友安をどうしたい?」って話をすると、みんな「かっこよくしたい」って言うんですよ。「もっと儲けたい」とか「上場して大きい会社にしたい」とか誰も言わなくて。利益ではなくて、自分たちが目指す「友安らしさ」を追求していきたいと、そう思ってくれているのではないかなと。
- では、今後の友安製作所についてはどのようにお考えでしょうか。
そうですね。会社の成長に伴い、以前から漠然と抱いていた「家が一軒建つくらいの商品数とサービスを提供したい」という想いが強くなり、「Add Colors to everyone's home(全世界の人々の生活の一部に自社製品を。)」というミッションを掲げました。その時に、「友安経済圏」というのを作っていきたいなということは考えましたね。
- 友安経済圏とは……?
私たちは、ECをメインに商品を販売していますが、事業は幅広く展開しています。それらは、全て「友安の商品を使ってもらうこと」に繋がっています。
例えば、カフェ事業を始めたのは、カフェには老若男女、誰でも入って来ることができるからです。インテリアのショールームというと敷居が高くなりますけど、カフェだったら気軽に入れますよね。うちのカフェは内装商材に自社商品を使っていて、照明、カーテン、壁紙にも全部値札を付けています。そこで、普段私達がECではリーチできないお客さまに「いいな、こんな値段でこんなことができるんだ」ということが伝われば、マーケットが拡がるし、私達のミッションである「Add Colors to everyone's home」に繋がると思いました。
レンタルスペース事業であれば、お部屋を持っているオーナーさんに、うちの工務店事業部のリノベーションを低価格で提供するかわりに、レンタル事業に登録していただくとか、うちの商品を使ってもらうとか、カタログを置いてもらうとかいろいろな形で拡げていっています。結果、いろんなお客さまに私たちの商品が目に触れる場所が増えてきたことは何事にも代えがたいと思っています。
- なるほど。それぞれ展開している事業やサービスによって、新たに「友安経済圏」が創出されるのですね。
はい。私たちがそこで望んでいるのは、各事業で儲けることではなく、商品を部屋の一部として使ってもらうことです。今は、オウンドメディアもやってますが、それも同様です。全ての事業部で仕掛けているものがありますが、結果何がしたいかというと「使ってもらうこと」に繋げたい。このように、周りを全部固めていくことで、私たちの経済圏を形成していけないかなと思っています。
クリエイティブこそが、お金を生む
- 最後に、デザインに関してお伺いします。まず、自社ブランド「Colors」で展開されている商品は様々ですが、デザインに対して意識されていることはありますか?
見た目だけでなく、商品を通して得られる経験にもこだわっています。DIYされる方は、ご自身で商品に価値をつけていると思うんです。多分、業者さんにつけてもらうカーテンレールと、ご自身がつけたカーテンレールでは、まったく同じものでも思い入れが変わってくるだろうなと。お客さま自身で壁紙を1箇所貼る、2箇所貼る。もしかしたら隙間ができるかもしれないけど、その隙間が愛おしく思える。そんな新しい価値が生まれるようなデザインを心がけています。
- やはり、「経験」を大事にされているのですね。では、経営に対してデザインを取り入れるという考え方についてはどう思われますか?
私はマストだと思っています。経営者って、クリエイティブに対して「お金がかかる」とか「お金を生まない」とか、どうしてもネガティブなイメージを持ってしまいがちかと思います。でも私は「クリエイティブこそが、お金を生む」って思いますね。
昔、まだ弊社に職人と営業しか居なかった頃、「クリエイティブ枠を採用する」と言ったら、「その人は何するの?」って猛反対されて。その反対を押し切ってアメリカ人を1人採用しました。でも、実際一緒に仕事をするようになったらみんなの考え方も「やっぱりクリエイティブは必要だ」って変わったし、自分たちが思い描く理想も上がったように思います。ちなみに彼はジェフという名前なんですが、彼を巻き込んで仕事をする際には「ジェフる」と言うようになりました(笑)。現在、うちには10名デザイナーがいますが、デザインしかしないのではなく、商品を自分たちで試しながらつくったり、全体に関わってくれています。そういう経緯もあり、デザインの重要性は強く感じています。
- 友安さんにとってデザインはどういうものか教えてください。
必要不可欠なものですね。人の五感や六感、そのすべてにデザインが関わっていて、匂いにもデザインはあると思います。なので、やっぱり全身で人が感じるものがデザインになるのかなと。そういうものが今後は主流になってきそうだと思います。経営においても、お客さまにどうアプローチするかは、効率化ではなくデザインを主軸において考えたいです。
「お誕生日おめでとうございます」って言うのは簡単だけど、花を添えるだけでもっと嬉しくなるじゃないですか。この「花」がデザインだと思っていて。世の中に出すものにしっかりデザインがあることで、惹きつけることができるんじゃないかなと思っています。
- ありがとうございました。
「自分で作る経験は、もっと世界を拡げるし、人生が楽しくなると思う」と友安氏は話してくれた。友安製作所は、「自分で作ることが当たり前になる文化」を目指し、DIY商品を通して「経験」を提供してくれている。同社が描くデザインが、私達のライフスタイルの概念を今後どのように変えてくれるかが楽しみだ。
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